2026.06.20
古民家の庭先で
古民家、というものは、屋根はあるけど外のような、そんな風の通り方をする。庭と部屋が一体になったような、中と外の境界線がないような、曖昧なような。みなかみ町月夜野に佇む、築百十年を超える古民家「ほうほう」は、まさにそういう場所で、そんな場所だから『庭先』というイベントを思いついた。

このあたりには昔蚕をやっていた古民家がいくつも並んでいる。
さなざわの温泉に入りに来ていた家主はおしゃべりが好きな近所のおっちゃんくらいに思っていたが、いつかどこかで誰かにこの家を託したいと思っていたんじゃないかと思う。さなざわで私たちに話しかけてくれたのもそういう気持ちがあったのかなと今となっては思う。

大広間で思い出すのは法事や宴会など、親戚や近所の人が集って賑やかだった子供の頃の記憶。もしくはサマーウォーズ。
この家もそんなふうにたくさんの人が集った家だったんだろう。そんな様子がよく似合う。

スタッフのみさきさんはクリエイティブに溢れた美しい料理をつくる人だ。
花を食べるための本を持っていたり、ミネラル分の味を知るためには石をなめろ、と教わって育ってきたらしい。

お父様は川場の自然学校に長く勤め、定年後の今は農大で教鞭を執っている。お母様は物腰柔らかでおしゃれさん。みさきさんがお母さんの洋服を着ていることもある。

最近はお父様と別の用事でお会いする機会があり、森の中にある道祖神がもつカントリーコードの話や、川場という場所と風の関係、土地が持つ記憶などを聞く機会があり、とても気になる存在。
その話はまたどこかで。

そんなみさきさんが「茶屋さんたち、FOGさんに是非一度行ってきてみてください」と紹介してくれるのだから、行かないわけがない。
早速渋川に車を走らせたどり着いた先で見た様子に、ここにはきっと面白い人がいる、と期待が走り、確信に変わる。

店舗へのアプローチとなるカーブした上り坂にはスケボーや椅子やライトと缶ビールの空き缶やコーヒーカップがコラージュ作品のように組み合わさり、看板として店への行き先を示す。その先に見えてくるのは単管パイプで組まれた屋根とエアストリーム、空に向かってリズムを刻むスピーカー、テントの下に並ぶ”インテリア”のはずのいろんな種類の椅子。どこまでが店なのか?これらは毎日片付けるのか?すべてのものは野ざらしなのか??という問いに、答えを求めるのも野暮に思えた。

ビールは常時150種類以上も用意があり、なおやさんはそのすべてを説明してくれる。

各テーブルにはお花が飾られ空間を優しく彩っている。
花瓶ではない、他の用途をもったものたちに生けられた花を見て、わぁやられた、これでいいんだよね、と思った。
お花は奥様のえりさんが用意しているそう。

その雰囲気そのまま、イベントに来てもらったのが今回の庭先でした。
お花を飾り、丁寧にエスプレッソを淹れ、好みに合わせて各国のビールを無限の知識の沼から引き出して解説しながら選んでもらい、知り合いが繋がり会話が弾んでいく。

ドリンクに合わせたみさきさんの料理も大変好評で、オープンからラストオーダーまでぐるぐると止まることなく走り続けた。

FOGさんのお知り合いの方もたくさん立ち寄ってくれて、私たちも大変刺激になりました。
また新しく生まれた繋がりから広がる未知の世界を楽しみに、次回の庭先も企画したいと思います。