2026.06.22
コーヒーについて聞きました 〜いい店ってなんだ?〜
plowerが運営するカフェ3拠点で提供されるコーヒーに焦点を当て、代表取締役・茶屋尚輝さんにインタビュー。コーヒー豆のことについてお話を伺いましたが、茶屋さんはもっと別のことを伝えたいようで…?
話題の視座がだんだん上昇していく様子もご注目ください。
─ 豆はどこで焙煎して、どうやってplowerに来てるのか教えてください。
茶屋: 都内のコーヒーロースターから、友人の会社を経由して仕入れています。
─ その豆を扱おうと思った理由は?
茶屋: オリジナルブレンドでコーヒーを出したいと考えた際に、たまたま繋がっていた友人の会社が豆の卸しをやっていたのでお願いをしたっていうだけですね。どうしてもそこのロースターが良かったとかそういうことではなくて。繋がりがある中でお願いしたら、すごいいいところだったっていうだけです。ツイてますね。
─ 茶屋さんはコーヒーに限らず何事もそうですよね。これ欲しいなって思ったら、それに詳しい人が近くにいた、みたいな。
茶屋: うん、ラッキーで生きてますね。オリジナルのブレンドを作りたいって話はしてたんですけど、僕は結局専門的な知識があるわけじゃないので。
例えば1からやろうとしたら、豆の種類ってすごく種類があるじゃないですか。まずはこちらからどんな味や焙煎具合を希望しているかを伝えて、ロースターから方向性を絞って提案をもらったものから最終判断をするって感じですね。
─ 味を決めていく時に、お店の雰囲気は関係ありましたか?
茶屋: はい。1番最初はDOAI VILLAGEの喫茶モグラなので、そこに合う味を作ろうってなった時に、古い無人駅でのカフェということで、お客さんの年齢層やジャンルも広いし、コーヒーにすごく拘ってる人に向けてというよりは、誰が飲んでもわかりやすいものを用意する必要がありました。

─ 茶屋さんはいつからコーヒーが好きなんですか ?
茶屋: 20代前半ぐらいかな。 それまではそんなに飲んでなかったと思う。東京に出てきて、友達とちょっとカフェ行ってコーヒー飲むみたいな。でもその頃はまだなにも分かってなかったと思います。
コーヒー飲むのは好きだけど、どっちかというとその時間とか空間の話ぐらいで捉えていて。
当時、別の地域で駅前に施設を作る事例があった時、コーヒースタンドも一緒に作るって話が一瞬あったんです。その時に、今仕入れさせてもらってる会社との関係が始まりました。彼らのカフェで修行させてもらいつつ、全然コーヒーのこともわかってなかったんで、とりあえず都内の有名店を回ってみましょうかって、8〜10件ぐらいの店を1日で回って。
それがきっかけで、それぞれのお店の雰囲気と味のことがちゃんと分かりはじめました。なのでコーヒーについての細かなことは30歳過ぎてからですね。
─ 「時間とか空間の話で捉えていた」というワードが出ましたが、これは現在も茶屋さんにとって大きなテーマのひとつであると、以前別の機会にお話を伺った際におっしゃっていましたね。茶屋さんの中で、コーヒーのウエイトはわりとライト?
茶屋: はい。空間全体の雰囲気で見てるのと、コーヒーをあまり難しくしたくないと思ってますね。誰が来てもコーヒー頼める店でいいんじゃないかなって思ってます。専門的なことは専門店があって、そのクオリティでやりたい人がやってくれるので。
自分の個人店だったらその辺も突き詰める可能性もあったかもしれないですけど、やっぱり会社で人を雇って、その人達にお店に立ってもらうとなった時に再現度は低くなるので、スタッフのためにも難しくせず、駅っていう公共性が高い場所に来てもらった時に難しくないものを提供してる店作りをしようというのがあるので。
難しい話ってどうでも良くて、そこがどんなお店で、どんな人がどんな雰囲気で提供してくれて、誰とどんな時に飲むかみたいなその時の印象が記憶に残ると思うので、コーヒーはそのサポート。空間と時間の提供のための1ピースでしかないみたいな。あまり難しくしないようにしてますね。

コーヒーの専門的な話は、日常的にはあまり必要ないと思っていて。要はお茶と同じように日常的に飲むものなので、すっと入っていけばそれでいいかなと思ってる。
究極、水でもいいよねっていう話をスタッフとよくしましたね。サービス自体がよく昇華されて、空間と提供するスタッフの雰囲気とで勝ちに行けるんだったら、もう売り物は水でもいいはずだっていう話を。それぐらいで思ってるっていうと分かりやすいかな。もちろん僕はコーヒー好きだし、淹れるというパフォーマンスとしての意味もあるとは思っていますけども。
─ 人の人生の邪魔はしない、みたいな?
茶屋: なんか意味づけはそこから勝手に皆がするじゃないですか。この1杯から始まったとかはそれぞれがすればいいだけで、大事なのは安定してスッと飲めて、分かりやすくちゃんと美味しいみたいな。それが簡単そうで難しいとは思ってるんですけどね。

─ カフェを運営していく上で、コーヒー以外に大事にしてることはありますか。
茶屋: 「特別」とかなのかな?
簡単に言っちゃうと、『できる限り綺麗に美しく見せる』っていうことなんですけど。お客さんがそのカフェに来た時に、視界に入る必要がないものが置いてあったりするとかが無いようにしたい。意図して置いてあるものはいいんですけどね。
例えばこの前ご飯屋さんに行ったら、届いた手紙とか、ポストからとりあえず出してきたんだなみたいな物やパンフレットがカウンターの上に乗ってるな、みたいな。客として自分ってそれぐらいに見られてるんだなってなるし、それって勿体ないと思う。それが知り合いのお店だと、よく言えば心を許してくれてるのかもしれないけど、例えば僕だと、知り合いがウチの店にちょっと顔出しに行くよって連絡もらったら、やっぱり綺麗に片付けたいと思う。
テーブルにお花を飾るとかを家でわざわざやる人の方が少ないかもしれないけど、コーヒー飲んでカップ置いたその視線の先に花があるっていうことで、すごく豊かな気持ちになるだろうな、とか。なんかちょっと気の利いた写真が飾ってあって、なんだろう?って思うみたいな。そういうお客さんの視界に入る範囲とかを想像して、せっかくだから少し特別な時間を用意しておきたい。
ただ、程よいノイズもあっても良いと思っていて。でも、明確に存在する必要のない、提供側の惰性によって置かれたノイズは全く必要ないと思ってるので、それをできる限り削りたい。
要はディズニーランドに行くのと一緒で、そうなってると没入感がすごくあるはずで、ちゃんと特別な場所で過ごした!って無意識のうちに脳みそは感じるはず。言語化できない「なんか気持ちいいんだよな〜」とか。
─ バリューが出ますもんね。
茶屋: 都会のいわゆるコーヒー専門店だとかカフェとか行くと、そういうことって当たり前のもので。それを田舎でもやることの価値を感じてます。田舎だとそこが「まあいいか」と許されちゃう感じが色々あって。

─ たしかに、田舎だとほっこり日常系に辿りつきがちかも。
茶屋: 都会で普通にあることをやる。でもそれは都会の真似じゃなくて、都会が当たり前にやってることを当たり前にやるみたいなのは結構キーワードになってるように思います。
逆に、「田舎だしまあいいでしょ」で、どんどん許容していっちゃうと、結局文化にならない・地域が育たないと思ってる。子供の時に連れて行ってもらった空間とかそういうのが全部その人の成長に意味をもたらすと思うので。情操教育しようとかじゃないんですけど、美しいもの見て育てば美しくなるだろうっていう単純な話で。この地域の今現在において、自分達の仕事はできるだけ異質な存在であった方がいいなと思ってるのはすごくありますね。
─ 今後コーヒーに新しい味を入れようかなとか、ちょっと変えようかな等は考えていますか?
茶屋: はい。スタッフの様子を見ながら考えてます。
僕やみさきさん(イヌワシストアマネージャー)が常に店頭に立つなら、今月の豆とかもやれそうなんですけど、アルバイトさんに任せる時間が多いという営業形態なので、あまり扱うものを増やさない方がいいなって。なのでスタッフの育ち具合を見ながらとかですね。コーヒーに興味ないけど入ってくる子もいるので。でも増やしたいとは思ってます。
─ そういえば以前、スタッフの皆さんでラテアート練習していましたが、その後どうなりましたか ?
茶屋: 今も頑張ってます。みんなそれぞれ切磋琢磨はしてますね。でもあれも別に本当は必要ないっていう。
僕がひねくれてるので、ラテアートがすごいからお客さんが来るって店はイヤだなみたいなのはある。
味さえ良ければ別にラテアートは必要ないんだけど、結局ラテアートがきれいに書けるということは、 ちゃんときめ細やかなミルクフォームができてるってことなので、そういう意味ではおいしさの裏付けでもあるけど、多分大半の人がそういうことがわかってないかもって。

─ すみません、私は知らなかったです。
茶屋: そうそう、なので必要ないっちゃ必要ないとも思ってます。
スタッフの楽しみであり、それがお店への帰属意識を高めるんであればいいかぐらいで見てますけど、練習には材料と時間を費やすので、やるんだったらめちゃくちゃ真剣にやって突き抜けてもらいたいな、みたいなのはありますね。
─ 基本的にカフェのスタッフさんたちはコーヒー好きが集まってるんですか?
茶屋: そういうわけではないです。コーヒーだけが好きな子って今はいないんじゃないかな。でも、スタバで最近こんなメニュー流行ってるけどうちでもどうですか、みたいな話はしてくれるから、それはそれでいいと思う。
その辺はみさきさんとアルバイトの子たちが「季節のメニュー、あれ美味しそうだった」とか試して飲んだり、「こっちの方が可愛い!」とかをやってる。
─ なら例えば、カフェで働きたいっていう人はコーヒーに関する知識はそれほど必要ない?
茶屋: 興味があったら嬉しいけど、オタクすぎてもウチでは大変かも。その人のコーヒーへの熱量をきっと満たせない。それよりも空間自体とか雰囲気のことに気を配れる人の方が合ってるだろうな。接客業とかカフェをやりたいっていう人が来てくれるならすごく意味があるし、それに応える体験は提供できてると思う。けど、コーヒーがすごく好きっていう人であれば、極端な話自分でお店やってみればーとか、専門店に行けばいいんじゃない?みたいな。

─将来自分のお店を持ちたいっていう人とは相性いいかも?
茶屋: うん。割とそういう人たちがスタッフの中に数名いると思います。これまでもいたし。だから、きっかけや勉強になるんだったら全然いいなって。
おしゃれかどうかよりも、いい食材を使っていい空間で提供したいって思ってる若い子たちが、飲食店なりコーヒー屋さんにどんどん挑戦するのが今増えてきてると思う。 でもカフェやりたいという想いだけでやっても、ちゃんといい接客できますか?とか、いい時間を渡せるようなお店作りをちゃんとできますか?とか、それでもって収支を成立させられますか?みたいなのは、やっぱり全然別の話で。
お店をやりたいと思う子たちの、そういう点での経験値を詰めるようなファーストステップになれるならすごくいいし、うちから卒業してお店やりたい人がもしいたら、200%ぐらいでサポートしますっていう感じです。
育っていく人がどんどん増えるならめちゃくちゃ狙い通りだなというか、そこは目指したいですね。那須のSHOZO CAFEが僕にとっては一つのベンチマークなので、その感じで飲食店が地域を育てていくのが超いいなと思ってます。
─ 有名なお店ですよね。SHOZO CAFEができてから、通りに色んな店が集まってきた、という方だったと記憶してます。
茶屋: 僕がそこに行って感動したのは、お店がおしゃれだとかそういうことじゃなくて。雰囲気とかSHOZOさんの話とかにおそらく憧れて、移住も含めて働きに来てるスタッフが全員、ちゃんとサービスとか接客業好きなんだなっていう顔で働いてる空気感が超良かった。もうそれが全てだなって。そういう人がたくさんいればそりゃ街は明るくなるわなって。お金と効率とみたいな話で接客業されても何もつまらないから、そういう人が減って、コーヒー1杯でめっちゃ楽しんでほしいんだみたいな人が増えるとそっから先、街にいいこと起きるなと思う。
そういう人を1人でも増やすのが、うちのお店の大事な役割のひとつだなと思ってやってます。

コーヒーを扱う店が数多ある中、〈この地域だから・plowerだから・このスタッフ達だからできること〉を大切にしている茶屋さんの、静かな炎が見えました。
ところが、終わり際にこんな言葉も。
「何事も語るには知識をつけなきゃいけないじゃないですか。でも僕は勉強が嫌いだから、面倒だなって思っちゃって深掘りができない。コーヒーのうんちくとか資格は本当に必要ないと思ってはいるけど、勉強嫌いっていうコンプレックスから来てるのかも…」
途中から話題が移り変わっていったことを気にしてか、ご本人は至って謙遜されていました。
私はお話を聞いて、コーヒーからお店・地域・未来にまで繋がっている地図を特別に見せてもらったようでワクワクしましたし、色々思うことのある昨今だけど腐らずいよう、となんだか勇気づけられたインタビューでした。