2026.06.12
職人の手仕事の裏側を見学。手ぬぐいが生まれる場所へ。
喫茶モグラとイヌワシストアの店頭に並ぶオリジナル手ぬぐい。
その一枚がどんなふうに形になっているのか、私たちも知らないことばかり。
そこで、制作をお願いしている「中村染工場」さんを訪ね、その工程を見学させていただきました。目の当たりにしたのは、効率やスピードを追い求めるのとは対照的な、どこまでも「人の手」が主役の現場。
今回は、職人のこだわりが凝縮されたオリジナル手ぬぐいの制作の様子を、ご紹介します。
中村染工場について

今回見学させていただいたのは、群馬県高崎市にある「中村染工場」さん。
明治30年(1897年)の創業以来、120年以上もの歴史を紡いできた染工場です。
創業当初は袢纏(はんてん)や帆前掛け、のれんなどが中心だったそう。戦時中には布が手に入らず、鯉の養殖などで食いつなぎながら工場を守り抜いた時代もありました。
戦後に再開してからは、時代の変化とともに手ぬぐいの需要が増え、現在へと至ります。
実はこちら、群馬県内で唯一「注染(ちゅうせん)」という伝統技法を守り続けている場所でもあります。
注染とは、その名の通り「染料を注いで」染める方法のこと。
現在主流のプリント(表面だけの色付け)とは違い、糸の芯まで染料を浸透させるため、表も裏も同じように美しく染まるのが特徴です。
にじみやゆらぎなどの表情の豊さ、使い込むほどに柔らかく馴染んでいく風合い。
そんな手ぬぐいの魅力を、100年以上も前から変わらぬ製法で今も制作を続けています。
想像を超えていた「手仕事」の真実
今回の見学では、嬉しいことに、系列店である「イヌワシストア」のオリジナル手ぬぐいを染めるタイミングに立ち会うことができました。

工場へ一歩足を踏み入れると、そこには初めて見る設備や器具ばかり。
これは何に使うんだろうと目移りしながら、大切な道具にぶつからないよう、そっと歩みを進めます。
今回、特別に見せていただいたのは「糊置き(のりおき)」と「注染(ちゅうせん)」という、とても重要な工程です。

まず目に飛び込んできたのは、出来上がったばかりの「型」です。
イヌワシストアのロゴを全体に散りばめたデザイン。
手ぬぐい作りにおいて、この型こそが、真っ白な布に模様としての命を吹き込む、全ての始まりと言える大切な存在です。
現在、多くの型は専用の機械を使って緻密に作り上げられますが、中には今でも職人さんが手作業で一点一点彫り上げるものもあるのだそうです。その繊細な手仕事を支えているのは、なんと90代の熟練の職人さん。
今もなお現役で、この大仕事を担われていると聞き、ただただ圧倒されました。

この型を使って行われるのが、「糊置き」という工程。
手ぬぐい一枚分の生地の上に型を乗せ、その上からヘラを使って、均一に「防染糊(ぼうせんのり)」を塗り広げていきます。こうすることで、糊をのせた部分だけが染まらず、美しい白として残ります。
実は、この糊置き、注染において一番熟練の技が要求され、この工程の出来が最終的な仕上がりに大きく影響するのだそうです。
手ぬぐい1枚分ずつ、丁寧な手仕事で進められていくことにとても感動しました。
色が「注がれる」瞬間
1枚ずつ糊置きを終えた生地は、ジャバラ状に折り重ねられ、20~40枚ほどの層に。
この厚みのある束を一度に染め上げるのが、「注染」という技法の大きな特徴でもあります。

今回、イヌワシストアの手ぬぐいのために用意していただいたのは、あたたかみのある「サーモンオレンジ」。
目の前にある染料そのものは、まるで熟成された赤ワインのような深くて濃い色をしていますが、仕上がりはもっと淡く、優しい色合いになるのだそう。
そんな色の変化も、職人さんの経験だけが知る魔法のようでわくわくします。

中村さんが手に持つのは、「薬缶(やかん)」とも呼ばれる細長い口のついたじょうろ。
そこから迷いなく、大胆に染料を注いでいきます。
注ぐと同時に、足元の操作で下からコンプレッサーでぐっと吸引。
注いでは吸い込むという作業を繰り返すことで、何層にも重なった糸の芯まで色が通り、表も裏も同じように美しく染め上げられます。

ひと通り染め終え、外側を覆っていた布をパッと外すと……そこには、イヌワシストアのロゴがくっきりと浮かび上がっていました!
糊置きをしていた部分は白く残り、それ以外の場所が鮮やかなオレンジに。
染料の種類によっては、糊の隙間に色が少しだけ入り込むこともあるそうですが、それこそが機械には出せない、一枚一枚表情が異なる、味のあるにじみになります。
すべての工程が、中村さんの手作業によって進み、目の前の生地が美しい柄に染まっていくのを拝見し、完成したオリジナル手ぬぐいへの愛着が、より一層深まっていくのを感じました。
仕上げまで手作業

染め上がった生地は、地下水で水洗いをして余分な染料と糊を落とし、乾燥させます。
そして、最後の「カット」や「畳み」の作業までも、手作業で行っているのだと伺いました。
さらに中村さんからお話を伺う中で、この「注染」という手仕事がどれほど、今日この瞬間も奇跡的に繋ぎとめられているかを知ることになりました。
例えば、糊付けに使う糊はすべて天然素材。しかし今、その原材料が手に入りづらくなり、いつ作れなくなるか分からない状況なのだそうです。
注染に欠かせない薬缶も、それを作る工場がもう無く、今あるものを大切に使い続けるしかない。
当たり前にあると思っていた道具や材料の一つひとつが、実はもう、代わりのきかない貴重なものなのです。
今回の工場見学は、手ぬぐい一枚にかけられる手間と、その貴重さを肌で感じる時間となりました。
販売する側として、これほど「人の手」を感じさせてくれるものづくりの魅力を、これからも大切に届けていきたいと思います。
喫茶モグラ・イヌワシストアで販売中

今回ご紹介した中村染工場さんの手仕事が詰まった手ぬぐいは、喫茶モグラの店頭でも販売しています。
実際に染めている現場を見せていただいたことで、お店に並ぶこの手ぬぐいたちが、これまで以上に愛おしくなりました。
注染ならではの味のある色合いを、ぜひみなさまにも直接感じていただけたら嬉しいです。
また、手ぬぐいのほかにも、ちょっとした贈り物にぴったりのオリジナルグッズをいくつかご用意しています。
喫茶モグラで美味しいコーヒーを楽しんだあとに、カウンターを覗いてみてくださいね。